〇紫芋

「芋ねぇ...。」

正確に言えば芋と思しき物、私の友人が何処からか持ち帰ってきた物なのであくまで憶測でしかないが、恐らく芋であろう物体。私は腕を組み小首を傾げながらソレを眺めている。

「検査した感じだと食べても問題はなさそうだが...。」

薬師である私が検査した結果、この物体はいくらかのビタミンと大量のでんぷん、そして食物繊維から成る植物細胞の塊だと言う事が分かっている。恐らくジャガイモと同様に栄養を貯めこみ過ぎた地下茎の成れの果てで、果肉が毒々しいまでに紫である一点を除けば至って普通の芋である。

「まぁ、味見はあの子にやってもらおうかな。食べても死にはしないだろ。」

死なないことは大前提として問題は味である、美味しく頂ければいいのだが...。というのもこの芋を持ってきた友人は運が良いことに森の中を散歩中たまたまこの芋の群生地を発見したらしく、もし食用だったら一緒に掘り起こして小遣い稼ぎにしようと誘われているのだ。危険な野山で体を動かすのは少々億劫ではあるが、私とてこんな臨時収入を易々と見送るような人間ではない。