〇錬金釜

「思うんですけど、私やフォツは毎日しっかり働いてるのにネムさんだけ何もしてないのはやっぱりズルいと思うんですよ。」

長らく空になっていたマグカップに暖かな紅茶を注ぎながら不満げにこちらを見つめてくる私の可愛い部下。その為にあなた達を作ったのだからそれはそうだろう。と、言ってやりたいところだがぐっと言葉を堪える。

「...…それもそうね。でも創造神っていうのは基本的に世界について考えることが仕事なの。だから私が毎日椅子に座ってただお茶を飲んでるだけの人に見えたとしても、実はしっかり仕事してるってワケなのよ。」

と適当にあしらったが、現に今この世界が抱えているとある問題についてどう対処したものか、ぼんやりと天井灯を眺めながら頭の中で検討に検討を重ねていた所だ。

「じゃあ今は何について考えてたんです?今晩の献立についてとかですか?」

「それはあなたの考えてる事でしょ。……錬金釜よ、錬金釜。一体どこ行っちゃったのかしらねぇ。」

錬金釜、私がこの世界を作る際に使っていた神器の一つなのだが実は最近行方が分からなくなっている。錬金釜は物質と物質を組合せて新たな物質を生成する為の道具で世界の枠組みが完成した今となっては別に無くて困るような代物ではないが、万が一にも人間の手に渡り悪用されてしまっては困る。